近年医療の現場でクオリティ・オブ・ライフという言葉を耳にするようになってきました。これはどのようなことに幸福を見出すことができるのか、といった考え方をするときに役に立ちます。その人によって人生の内容の質に違いが生まれます。また、社会的にみた生活の質も違ってきます。ですが生活水準が高ければ幸福度も高いのかというと、全く別の話になってきます。つまり幸福度とは、その人がどのようなことに幸福感を感じているかどうか、ということなのです。ですからお金に困っていなくても人間関係が希薄であったり、孤独感を感じている人の場合は幸福度が高いとは言えないでしょう。

よく「歳をとってから旅行する」という若者がいますが、実際に仕事から引退して時間にもお金にも余裕が出来て世界中を旅行出来る環境になったとしても、心身が健康でなければ旅行が出来ない、誰かに依頼しなくてはいけないといった状況になってきます。このような状況でも楽しむことが出来れば幸福感を得ることは出来ますが、このような状況を悲しむ場合は幸福感を感じられることは期待出来ません。つまり収入や生活水準に関しては同じ基準で考えたり想像することができるのですが、幸福感については個人差が大きいのだということです。

医療現場の場合、患者と直接関わることも多いのですが患者の幸福感がどこにあるのか、何を求めているのかといった判断が必要になってきます。判断を間違えると大きな問題にもなりかねません。患者それぞれの幸福に対する考え方、感じ方をしっかり理解して、患者によって医療への理解を進める必要があるかもしれません。そのためにはコミュニケーション能力を高めるという努力が必要なのではないでしょうか。そして医療に関わる人がそれぞれ意識することで、より良い医療を提供することが出来るようになるのではないかと思います。